海外市場への進出を目指す企業にとって、「海外SEO(International SEO)」は現地の潜在顧客にリーチするための重要な施策です。言語や文化、検索エンジンの特性が異なる海外では、国内SEOとは異なる視点と戦略が求められます。
本記事では、海外SEOのメリットやデメリットなどの基本から、導入時の判断基準まで、実務に役立つ視点で解説します。
海外SEOとは?
海外SEOとは、海外の検索エンジンで上位表示されるためにWebサイトを最適化する施策のことです。 言語や検索エンジンの種類、検索行動などが国ごとに異なるため、それぞれに合わせた対策が必要です。Googleだけでなく、Bingや百度(バイドゥ)、Naver(ネイバー)など、その国で使われている検索エンジンへの対応も重要です。
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海外SEOのメリット・デメリット
まずは、海外SEOに取り組むことで得られるメリットと、デメリットを見ていきましょう。
海外SEOのメリット
海外SEOを導入することで、新たな顧客層やマーケットを開拓できる可能性が大きく広がります。特に国内市場が飽和している企業にとって、海外市場への展開は事業拡大の有効な手段です。競合の少ないニッチな地域や市場に参入できれば、一気にシェアを獲得できるチャンスも生まれます。
海外SEOを実践することで、海外の検索ユーザーに対して自社の存在を効果的にアピールできます。その結果、新規顧客の獲得だけでなく、ブランド力の向上やグローバルな信頼性の確立にもつながります。
特に日本製品は品質や信頼性に対する評価が高く、検索エンジンでの上位表示によってその価値をさらに強化することが可能です。
また、海外SEOへの取り組みは、結果的に海外展開のノウハウ蓄積にもつながります。競合がまだ参入していない市場への先行的アプローチにより、先行者利益を得るチャンスもあります。
- 新たな顧客層やマーケットの開拓
- ブランドの信頼性や知名度の向上
- 海外展開へのノウハウの蓄積
海外SEOのデメリット
海外SEOにはコストとリスクも伴います。翻訳や現地向けコンテンツの作成、法規制への対応、顧客サポート体制の構築など、多面的な取り組みが必要です。企業規模によっては、これらが短期的に大きな負担になる可能性があります。 また、対応言語や地域が増えることで、サイト運営やユーザーサポートの管理も複雑化します。多国籍チームで運用する場合は、明確なルールとガバナンス体制を構築しておく必要があります。
加えて、現地の文化や習慣を十分に理解せずにプロモーションを行うと、ユーザーの反感を買い、ブランドイメージを損なうリスクもあります。戦略の不備やリサーチ不足が、コストばかりかかってしまい成果が出ないという結果を招くこともあるため、慎重な計画が不可欠です。
- 初期コストや運用負荷が高く、企業規模によっては大きな負担になる可能性がある
- 文化・言語の違いに対応しきれないと、ブランドイメージの毀損リスクがある
- 戦略やリサーチが不十分な場合、成果が出ず費用倒れになる恐れがある
「International SEO」という考え方
「海外SEO」という言葉は、日本企業が特定国向けに行うSEO施策として使われることが多い一方、英語圏では「International SEO」という用語が一般的に用いられます。
両者は基本的には同義ですが、使われる文脈や焦点に若干の違いがあります。
日本企業の「海外SEO」傾向
日本企業では「アメリカ市場向けに英語対応を進めたい」「東南アジアに向けてPRしたい」といったように、特定の国や地域への対策から始まるケースが多く見られます。このような背景から、「海外SEO」という表現が定着しています。
欧米企業の「International SEO」傾向
欧米の企業は、最初から多言語・多地域に対応する前提でSEO戦略を構築する傾向にあります。例えば、10言語以上への対応や、ユーザーの地域に応じたページの出し分け、検索エンジンへの構造的なサイト情報の伝達など、より技術的・包括的な対応が求められます。
用語 | 主に使われる場所 | ニュアンス・焦点の違い |
海外SEO | 日本 | 特定国へのSEO対策として使用されることが多い |
International SEO | 英語圏 | 多地域・多言語対応の構造的なSEO戦略として使用される |
海外SEOを考慮したサイト構造の設計
将来的に海外展開を見据えているのであれば、最初から拡張性のあるサイト構造を検討することをおすすめします。なかでも、サブディレクトリ型の構成は、SEO・運用両面でのメリットが大きいです。
サブディレクトリ型とは?
1つのドメイン内で、言語や地域ごとにディレクトリを分ける構成です。
例:○○.com/ja/(日本語)、○○.com/en/(英語)
◆サブディレクトリ型のメリット
- ドメイン全体のSEO効果を集約できる
- Google Search Consoleで一元管理可能
- 効率的にサイト更新や管理ができる
- 多言語展開を段階的に進めやすい
Googleはなぜ「google.com」に統一したのか?海外SEOの話題になると、しばしば取り上げられるのが「Googleはどうしているのか?」という問いです。Googleはかつて、国ごとに「google.fr」「google.co.jp」など異なるドメインを運用していました。しかし現在では「google.com」に一本化しています。これは、『動的配信』という手法で、ユーザーの位置情報に応じて自動で言語や地域に合った検索結果を表示しています。 ■ドメインを統一するメリット理由1:ブランドの統一と覚えやすさ google.com という単一ドメインに統一することで、どの国のユーザーも同じURLからアクセスでき、モバイルでもシンプルな体験を提供できます。 理由2:運用の効率化 ccTLDで各国ごとに管理するより、1つのドメインに統合した方が開発・セキュリティ・SEOの管理が圧倒的に楽になります。 ※ccTLD(Country Code Top-Level Domain)とは、国や地域ごとに割り当てられたトップレベルドメインのことです。例:.jp(日本)、.us(アメリカ)。 理由3:地域判別の技術的進化 IPアドレス、ブラウザ言語、Googleアカウントの設定などを組み合わせて、ユーザーの地域と言語を高精度で自動判別できるようになったため、URLに言語コードを入れずとも適切に切り替えられます。
※「hreflang」タグ(ページごとの対応言語や地域をGoogleに伝えるためのHTMLタグ)を設置することで、ユーザーが使用する検索エンジンと言語に合ったページが表示されやすくなります。 ◆多言語サイトの構成
Googleのように「1つのURLでグローバル対応」というアプローチは、強大な技術力とインフラがあるからこそ可能な方法です。 |
海外SEOに取り組むべきか?判断のポイント
海外SEOは、適切に取り組めば新たな市場を開拓し、売上拡大につながる可能性のある施策です。しかし、国内と比べてハードルも高く、やみくもに始めるとコストや工数ばかりがかかってしまう恐れもあります。 だからこそ、まずは「実施するべきかどうか」を冷静に見極めることが重要です。
メリットがデメリットを上回るかどうか
海外SEOは、翻訳・現地調査・技術対応など、多くの準備やリソースを要するため、それに見合うリターンが得られるかを事前に見積もることが不可欠です。以下のような観点で費用対効果を整理してみましょう。
- 対象国・地域での市場規模や成長性
- 見込み顧客をどの程度獲得できそうか
- 必要な人的リソースや翻訳・運用コスト
- 為替や物流の影響によるコストの増減
このように、事業的なメリットとSEO施策にかかる負荷・コストを天秤にかけ、「投資に見合う成果が見込めるかどうか」を明確にすることが出発点となります。
競合他社のSEO状況を把握する
もう一つの重要な判断軸が「競合の動向」です。 すでに競合他社が現地で積極的にSEOを展開している場合、上位表示を狙うには相応の戦略やリソース配分が求められます。逆に、まだ競合が少ない・手薄なエリアであれば、先行者利益を得られるチャンスがあります。
競合分析を行う際は、以下のような点に注目するとよいでしょう。
- 現地語で検索した際に競合サイトがどのように表示されているか
- 現地で使われているキーワードやコンテンツの傾向
- ローカルSEOや多言語対応の取り組み状況
- 広告出稿の有無や、SNSなど他チャネルでの露出状況
競合の取り組み具合を参考にすることで、自社が入るべき市場なのか、勝てる余地があるのかを見極めやすくなります。
まとめ:SEOの必要性を理解して長期的な成功を目指そう
海外SEOは、単にWebサイトを翻訳すれば済むものではなく、現地の検索エンジン環境や文化的背景、法規制までを含めた包括的な対応が求められる、非常に戦略的な取り組みです。しかし、その分しっかりと設計・運用できれば、新たな市場開拓やブランドの国際的な信頼性向上につながる、大きな成果を得ることができます。
次回は、実践編として海外SEOにおける7つの具体的な戦略を、順を追ってわかりやすく解説します。
海外SEOで成果を上げるためには、ターゲット市場の徹底したリサーチと、現地の検索行動に即した戦略設計が欠かせません。単に既存コンテンツを翻訳するだけでは、競争の激しい海外市場で検索上位を獲得するのは難しいでしょう。前回の記事では、海外S[…]
自社にとって海外SEOが本当に必要かどうかを見極めつつ、無理のない形で計画的に進めることが成功への第一歩です。競合分析やコスト試算を行い、必要なリソースを確保したうえで、グローバルな成長戦略の一環として、海外SEOを活用していきましょう。
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