海外SEOで成果を上げるためには、ターゲット市場の徹底したリサーチと、現地の検索行動に即した戦略設計が欠かせません。単に既存コンテンツを翻訳するだけでは、競争の激しい海外市場で検索上位を獲得するのは難しいでしょう。
前回の記事では、海外SEOの基本知識から、導入時の判断基準までを解説しました。今回はその実践編として、海外SEOで成果を出すための7つの具体的な戦略を、順を追ってわかりやすく解説します。
海外市場への進出を目指す企業にとって、「海外SEO(International SEO)」は現地の潜在顧客にリーチするための重要な施策です。言語や文化、検索エンジンの特性が異なる海外では、国内SEOとは異なる視点と戦略が求められます。本[…]
海外SEOを成功に導く実践戦略
グローバル展開を視野に入れるBtoB企業にとって、海外SEOは単なる翻訳対応では不十分です。成果を出すためには、ターゲット市場の選定から技術的な最適化、信頼性の構築、ユーザー体験の改善まで、戦略的に施策を講じる必要があります。 ここでは、海外SEOで成果を出すために押さえておきたい7つの重要な戦略を、実務に活かせる視点から解説します。
戦略1. ターゲット国・地域の選定と調査
海外SEOの第一歩は、「どの国・地域をターゲットにするか」の明確化です。市場規模、消費者の属性、競合状況、主要検索エンジンのシェアなど、複数の観点から絞り込むことで、効果的な戦略を立てやすくなります。
ターゲットの選定には、Googleトレンドや現地の統計データ、商工会議所の海外情報レポートなどを活用しましょう。加えて、現地在住者や専門家の意見を取り入れることで、リアルな消費行動の理解が深まります。特に新興国ではデータの信頼性にばらつきがあるため、複数ソースからのクロスチェックが重要です。
選定した地域によっては、商習慣や決済手段、物流などで予期せぬ課題が生じることもあります。事前の徹底したリサーチによりトラブルを事前に避けることができます。
- 複数の観点から、どの地域を優先的に攻めるべきか判断する
- 現地代理店やパートナーのヒアリング活用も有効
戦略2. ネイティブ翻訳とローカライズで信頼性を高める
海外ユーザーに信頼されるためには、自然で分かりやすい言語表現が不可欠です。単なる機械翻訳では不自然な表現や誤訳が目立ち、企業イメージの低下につながる恐れもあります。現地の言語習慣や文化的背景を理解したネイティブ翻訳を行い、違和感のないコンテンツを提供することが重要です。
製品情報やFAQ、規約などの各種コンテンツも、現地ユーザーが理解しやすいようにローカライズしましょう。単位表記や文化的背景に合わせた事例の挿入など、きめ細やかな対応が満足度の向上につながります。 特にBtoBビジネスでは、専門用語の誤訳が信用問題に直結するため、専門翻訳者の関与が望まれます。言語は単なるコミュニケーションツールではなく、ブランド価値を支える重要な要素と捉えましょう。
- 現地の文化や業界用語に合ったローカライズで、読み手の理解と共感を得る
- 翻訳だけでなく、事例・CTA・トーンも調整
戦略3. サーバー・ドメインの選定(国別ドメインと現地サーバー)
検索エンジンは、サイトのドメインやサーバーの所在地を評価指標として利用します。その国に合わせたトップレベルドメイン(ccTLD)や現地サーバーを利用することで、地理的関連性を示しやすくなります。ただし、海外サーバーは日本からの管理が難しくなる場合もあるため、状況に応じてグローバルCDNを導入するなどの対応が有効です。ページの読み込み速度はSEOに直結するため、スピード最適化も同時に検討しましょう。
また、ドメイン選定の際は、言語ターゲットやブランド認知の観点からも慎重に検討することが必要です。国別ドメイン(.jpなど)を採用すれば現地感が高まりやすい反面、認知度の高いグローバルドメイン(.comなど)が適しているケースもあります。自社の事業展開計画を踏まえて、柔軟に最適解を探るようにしましょう。
※ccTLD(Country Code Top-Level Domain)とは、国や地域ごとに割り当てられたトップレベルドメインのことです。例:.jp(日本)、.us(アメリカ)。
※グローバルCDN(Content Delivery Network)とは、世界各地に分散したサーバーを活用し、Webコンテンツを高速・安定的に配信する仕組みです。海外ユーザー向けの表示速度向上に有効です。
また、グローバル展開を視野に入れる場合は、Amazon Web Services(AWS)をはじめとするクラウドサービスの活用も有効です。
AWSは世界中にデータセンター(リージョン)を展開しており、ターゲット国に近いロケーションを選んでホスティングすることで、表示速度の向上やジオターゲティング精度の改善が期待できます。
同様に、Google Cloud Platform(GCP)も豊富なグローバルインフラを提供しており、検索エンジンとの親和性の高さからSEO観点でも注目されています。
さらに、CloudflareのようなCDNサービスを併用すれば、地域を問わず高速なページ表示を実現でき、DDoS対策やセキュリティ強化にも寄与します。
このようなクラウドやCDNの組み合わせにより、海外ユーザーにも安定したUXを提供できる体制を整えることが可能です。
※DDoS攻撃とは、複数の端末から同時に大量の通信を送りつけ、Webサイトやサーバーを一時的にダウンさせるサイバー攻撃の一種です。
- 対象地域ごとに最適なドメイン・サーバー設計を行う
- 「サブディレクトリ構成+グローバルCDN」が扱いやすくSEO効果も高い
戦略4. hreflangタグとジオターゲティングの最適化
複数の言語・地域に対応するサイトでは、hreflangタグの適切な設定が必須です。これにより検索エンジンは、どのページがどの言語・地域向けかを正確に把握し、該当するユーザーに最適なページを表示できます。
hreflangタグ 記述例 |
Google Search Consoleによる地域設定や、サーバー所在地を考慮したジオターゲティングの活用も効果的です。汎用ドメインを使用する場合は、手動設定が必要になるケースもあるため、サイト設計段階から対応を想定しましょう。
近年はAIによる文脈理解も進んでおり、検索エンジンはより高度なアルゴリズムでページを判断しています。正確な設定によって、地域別に用意したコンテンツを確実にターゲットユーザーに届けられるようにしましょう。
※hreflangタグとは、同じ内容のページが複数言語・地域向けに存在する場合に、対象の言語や国を検索エンジンに伝えるためのHTMLタグです。
※ジオターゲティングとは、ユーザーのIPアドレスや位置情報をもとに、地域ごとに最適化されたコンテンツや広告を配信するマーケティング手法です。
- hreflangは全ページ双方向で設定(例:en–fr、fr–en)
- XMLサイトマップへの記載も推奨
戦略5. 現地のトレンドを踏まえたキーワードリサーチ
海外SEOでは、単に日本でよく検索される英単語を使えばよいわけではありません。現地特有の言い回しやトレンド、文化的背景を踏まえたキーワードのリサーチが必要です。
キーワードプランナーやUbersuggestなどのツールで現地の検索ボリュームや関連キーワードを把握し、そのうえでSNSやフォーラムを調査して生の声を取り入れるのも効果的です。
また、新しいテクノロジーやサービス、流行りのトピックは国によって大きく異なることがあります。Googleトレンドなどを活用し、自社に関連する検索ワードの変化を継続的にチェックすることが競合との差別化につながります。
- 日本語キーワードを単純翻訳しても、現地の検索意図に合わないことが多い
- 現地ユーザーが使う表現や課題感に即したキーワード設計が成果に直結
戦略6. 被リンクとSNSで信頼性・認知度を向上
被リンク獲得は、海外SEOにおいても効果も大きい施策の一つです。現地の信頼性あるメディアやブログ、業界フォーラムでの紹介は、SEO効果だけでなくブランド認知にもつながります。リンク数よりも質と関連性を重視し、信頼関係の構築を意識しましょう。
SNS活用も海外SEOには欠かせません。英語圏ではInstagramやX(旧Twitter)、Facebook、中国ではWeChatやWeibo、ロシアではVKなど、各地域の主流SNSを把握し、効果的に活用することが鍵となります。
- 海外イベント出展にあわせて、プレスリリースや記事掲載を事前に手配する
- LinkedInなどBtoB向けSNSでの拡散も活用
戦略7. 速度改善とモバイル最適化でUXを向上
モバイル検索が主流の現在、サイト速度とモバイル対応は海外SEOの成功を左右する重要な要素です。とくに通信インフラが日本ほど整っていない国では、読み込み速度がユーザー離脱の大きな原因となります。
画像の圧縮やキャッシュの活用、CDNの導入などにより、どの地域からも安定した表示速度を確保しましょう。レスポンシブデザインによるスマホ最適化も、ユーザビリティの向上に直結します。
さらに、Googleが重視する「Core Web Vitals」に対応することで、検索順位への好影響も期待できます。サイトの品質を保つためには、一度整備して終わりではなく、定期的なチェックと改善が不可欠です。
※Core Web Vitals(コアウェブバイタル)とは、Googleが定めたWebページのユーザー体験を評価する指標で、表示速度・操作性・視覚安定性の3要素(LCP、FID、CLS)で構成されます。
- グローバルCDNの導入や画像の軽量化、モバイル表示最適化が重要
- PageSpeed Insightsで地域別のパフォーマンスを確認
ページの読み込み速度改善とCore Web Vitalsについては、こちらのページで紹介しています。 関連記事 ページの表示速度は、ユーザー体験(UX)やSEO に大きな影響を与えます。特に、Googleが検索ランキング要素として「Core Web Vitals(Webの重要指標)」を導入して以来、Webサイトの高速化はますます重要になっています。[…] |
海外SEOで気を付けたいリスクと注意点
■Google以外の主要検索エンジンへの最適化
特定の国・地域では、Google以外の検索エンジン対策も重要です。アメリカや欧州など英語圏ではBingが一定のユーザーを持ち、中国本土ではBaiduが高いシェアを誇ります。例えばBaiduは独自の検索広告ネットワークやローカルコンテンツシステムを持ち、Googleとは異なるSEO対策が求められます。特定地域に特化した戦略をとる際には、こうした現地の主要検索エンジンへの最適化が極めて重要です。
また、ロシア圏ではYandexが大きな存在感を持っており、日本からの越境ECや情報発信をするには対応が必須となります。アルゴリズムの違いだけでなく、地理情報の活用や独自サービスとの連携といったポイントも抑えると、検索結果で有利に働く場面が多いです。海外SEOを本格的に進める場合は、必ずしもGoogle一本に絞らず各エンジンを研究しましょう。
国・地域 | 検索エンジン | 補足情報 |
中国 | Baidu(百度) | 中国で最も利用されている検索エンジン。政府の規制に適合したコンテンツが必要。 |
Sogou(搜狗) | 音声検索や微信(WeChat)との連携に強み。 | |
ロシア | Yandex | 地元ユーザーに強く、ロシア語の文法に最適化。地図・翻訳機能も充実。 |
韓国 | Naver | ポータル型検索エンジン。SEOよりもコンテンツプラットフォーム戦略が有効。 |
Daum | Naverに次ぐ人気を持つ検索ポータル。 | |
台湾・香港 | Yahoo! Taiwan / Yahoo! HK | ローカルではまだ一定の利用者が存在。 |
アメリカ・西欧 | Bing(Microsoft) | Windows・Edge標準搭載で企業利用が多い。広告配信も可能。 |
DuckDuckGo | プライバシー重視層に人気。SEO効果は限定的だが、認知しておくと良い。 |
こうした多様な検索エンジンへ最適化を行うには、使用言語やサイト構造の見直しなど基本的な部分から見直す必要があります。ローカル検索機能への対応やフィード登録など、国や地域ごとに最適化の方法が異なるため、広範な知識が求められます。結果として、より多くのユーザーにリーチできるチャンスが広がるでしょう。
■文化・宗教的なタブーへの配慮を怠らない
海外展開では、文化的・宗教的背景にも十分な配慮が求められます。日本では問題とされない表現やビジュアルが、特定の国や地域では宗教的・社会的に不適切とされる場合があります。例えば、肌の露出や特定の色・シンボルがタブーとなるケースもあります。広告やバナー、画像選定においては十分な注意が必要です。現地の文化に詳しい担当者やネイティブのアドバイザーに確認をとることで、不要なトラブルを避けることができます。
■プライバシー保護規制の違いを正しく理解する
国や地域によって、個人情報の取り扱いに関する法規制は大きく異なります。特にEU圏ではGDPR(一般データ保護規則)が厳格に適用されており、Cookieの利用や個人情報の収集に関するルールを遵守しないと、多額の罰金を科される恐れがあります。進出先の法制度を事前に把握し、プライバシーポリシーや利用規約を現地基準に合わせて適切に整備することが必要です。
Cookie規制とGDPRについては、こちらのページで紹介しています。 関連記事 Webサイトを見ているとよく目にする「Cookie(クッキー)」。前回はCookieの役割や仕組み、1st party Cookieと3rd party Cookieの違いなどをご紹介しました。[sitecard subtitle=関連[…] |
■決済・物流など現地商習慣に合わせた設計をする
SEOや集客が成功しても、商習慣とのミスマッチがあると成果にはつながりません。日本では一般的な決済方法が、海外では普及していなかったり、信頼されていなかったりすることもあります。例えば、クレジットカード決済が主流の国もあれば、銀行振込やQRコード決済が一般的な国もあります。為替や物流、納期の問題も含め、ターゲット市場に合わせた決済手段や配送体制を整えることで、コンバージョン率の向上にもつながります。
海外SEOで活用したい便利ツール
海外向けのWebサイトを最適化するには、信頼できるツールを使って情報収集や分析を行うことが欠かせません。ここでは、海外SEOに役立つ代表的なツールを「キーワードリサーチ」「サイト分析」「翻訳支援」の3つの分野に分けて紹介します。
1. キーワードリサーチツール
■使用ツール例:Google広告キーワードプランナー、Ubersuggest
海外SEOの第一歩は、ターゲット地域や言語に合ったキーワードを選定することです。 Google広告のキーワードプランナーやUbersuggestを使えば、各国ごとの検索ボリュームや競合状況を確認できます。 特に海外では、同じ意味でも表記や言い回しが異なる場合が多いため、ツールを使ったデータ収集が重要です。地名や現地特有の言葉を含むローカルキーワードもリサーチし、ニーズに合ったロングテールキーワードまで網羅することで、より精度の高い戦略が立てられます。
ただし、ツールのデータはあくまで目安。検索トレンドやユーザー行動は常に変化するため、定期的に見直しと調整を行い、PDCAサイクルを意識した運用が必要です。
2. サイト分析・表示速度のチェック
■使用ツール例:Googleアナリティクス、WebPageTest
海外からのアクセス状況やユーザーの行動を把握するには、Googleアナリティクスが非常に有効です。国・地域ごとのアクセス数やCV率、滞在時間などを可視化でき、注力すべき市場を見極める手がかりになります。
一方、WebPageTestは地域ごとのページ表示速度を測定できるツールです。海外ユーザーの閲覧環境を再現し、モバイル表示や読み込み速度の課題を洗い出すのに役立ちます。
ページの表示速度はSEOや離脱率にも影響するため、画像の圧縮・キャッシュ設定・CDN導入などで改善を図りましょう。継続的なモニタリングが成果を左右します。
3. 翻訳支援・現地検証ツール
■使用ツール例:DeepL、VPNサービス
AI翻訳ツールの代表格であるDeepLは、従来の機械翻訳に比べて自然で精度の高い文章を生成できます。専門用語や長文の翻訳でも精度が高く、翻訳作業の効率化が期待できます。ただし、最終的な品質チェックは必須です。
また、VPNサービスを利用すれば、特定の国からの検索結果や自社サイトの表示状況をシミュレーションできます。現地での検索順位やページの見え方を確認できるため、ローカライズ戦略の検証に最適です。
これらのツールを組み合わせて使うことで、より正確で効果的な現地対応が可能になります。とはいえ、最終的な品質を担保するのは「人の目」。ツールを活かしつつ、人によるチェックを怠らないことが重要です。
まとめ
コストやリスクは大きいものの、それを上回る可能性を秘めているのが海外市場です。大きな成功を収める企業に共通しているのは、入念なリサーチと柔軟な戦略のアップデートを怠らない姿勢です。自社の強みを海外ユーザーへどう伝えるかを常に考え、試行錯誤を繰り返すことが欠かせません。
まずは本記事で紹介した基本戦略をベースに、自社に合った最適解を見つけるところから始めてみてください。
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