Cookie規制やプライバシー保護の強化により、広告の“成果が正しく測れない”という課題は、BtoB企業でも深刻化しています。特に、資料請求・ホワイトペーパー・セミナー申込など、フォーム経由のリード獲得が中心のBtoBマーケティングでは、計測精度の低下がそのままCPA(顧客獲得単価)悪化に直結します。
こうした環境変化の中で注目されているのが、コンバージョンAPI(CAPI)です。コンバージョンAPIは、従来のCookie計測とは異なり、サーバーから直接成果データを送信できる仕組みで、ブラウザ規制に左右されず、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)に登録されたデータとも自然に結びつくため、BtoB企業と相性が非常に良い技術です。
本記事では、コンバージョンAPIとは何か、その仕組みから、BtoB企業における活用ポイント、導入ステップまで、初心者にも分かりやすく解説します。「計測できる企業が勝つ時代」に備え、いま取り組むべき対策を押さえていきましょう。
コンバージョンAPIとは?
コンバージョンAPI(CAPI)とは、資料請求や会員登録、購入などの“成果データ”を、広告主のサーバーから直接広告プラットフォームへ送る仕組みのことです。
これまでは、多くの広告計測がユーザーのブラウザを経由して行われていましたが、ブラウザのCookie規制が強まったことで、成果データが正しく届かないケースが増えています。そこで登場したのが、サーバー間でデータを送るコンバージョンAPIです。
コンバージョンAPIは、次のような特徴をもつ仕組みです。
- 会員登録・資料請求・購入などの成果データをより正確に媒体へ伝えるための方法
- Cookie(ブラウザの仕組み)を使わないため、ブラウザの制限による“計測漏れ”が起きにくい
- Google、Yahoo!、Meta など主要な広告プラットフォームが採用している標準的な仕組み
Cookieに依存しないため、広告ブロッカーなどにも左右されず、成果データが安定して送信されます。結果として、媒体側の最適化が正しく働き、広告効果の改善につながります。
Cookieとの違い
従来の計測とコンバージョンAPIの違いを、シンプルに整理すると次のようになります。
| Cookie(従来の方法) | コンバージョンAPI(CAPI) |
| ・ブラウザにデータを保存 ・ブラウザのプライバシー規制の影響を受けやすい ・計測が途切れたり、成果データが欠損しやすい | ・自社サーバーから広告プラットフォームへ直接データを送信 ・ブラウザの制限に左右されない ・成果データを安定して届けられるため、計測精度が大きく向上する |
従来の「ブラウザ経由の計測」が弱くなる一方で、サーバー間のデータ連携であるコンバージョンAPIはより正確で安定しています。そのため、BtoB企業を含む多くの広告主が、今後の標準的な計測方法として導入を進めています。
なぜ今、コンバージョンAPIが重要なのか〜注目されている背景
近年、デジタル広告の計測環境は大きく変化しています。その背景にあるのが、プライバシー保護を目的としたCookie規制の強化です。世界的に個人データの扱いが厳しくなり、ブラウザ上のユーザーデータ取得には多くの制限が課せられています。日本でもプライバシー意識が高まり、Cookie依存の広告計測は年々難しくなっています。
Cookie規制で広告の計測精度が低下
Google Chromeをはじめ、多くのブラウザがサードパーティCookieの制限、段階的廃止を進めています。従来のリターゲティングや広告成果計測はこのCookieに大きく依存していたため、今後は「計測できない」「成果が見えない」という状況が増えていきます。
広告運用は、「正しく測る → データを学習 → 広告配信を最適化する」という流れで成果が改善されます。
しかし、計測が不完全だと、「本来発生している成果が媒体に届かない」 → 「機械学習が正しく働かない」 → 「結果としてCPA(顧客獲得単価)が悪化しやすい」という悪循環が発生します。
特にBtoB企業では、「資料請求」「ホワイトペーパーダウンロード」「問い合わせフォーム」など、フォーム経由のコンバージョンが多いため、ブラウザ依存の計測は不安定になりやすいのが現状です。
■ 解決策として注目されるコンバージョンAPI(CAPI)
コンバージョンAPI(CAPI)が急速に普及している背景には、「これまでの計測方法が通用しにくくなっている」という大きな環境変化があります。こうした課題に対する有効な解決策が、コンバージョンAPI(CAPI)です。コンバージョンAPIは、Cookieに頼らず、サーバーから直接コンバージョンデータを送信できる仕組みであり、ブラウザ規制の影響を大幅に軽減します。
これにより、「失われていた成果データを正確に取得」「機械学習が改善」「CPAやCV数が安定」といったメリットが期待できます。
広告成果計測精度の低下
広告ブロッカーやトラッキング防止機能の普及により、タグが正しく動作せず成果が計測されないケースが増えています。特にBtoB企業では、企業ネットワークのセキュリティ設定によってCookieがブロックされることも多く、ブラウザベースの計測はさらに不安定になりがちです。
広告プラットフォームの成果最適化(=機械学習)は、「どのユーザーが成果につながったか」というデータを元に学習します。しかし、その成果が正しく計測できないと、「最適な配信ができない」「無駄なクリックが増える」「CPA(獲得単価)が悪化しやすい」といった問題が発生し、広告効率は大きく低下します。
広告アルゴリズムの精度は、入力されるデータ量とデータ品質に比例して向上します。つまり、正しい成果データを安定して送れる企業ほど、広告最適化が進み、成果も出やすくなるということです。そのため、Cookieに依存せず確実に成果データを送信できるコンバージョンAPI(CAPI) は、今後のデジタル広告において“必須インフラ”として重要性が高まっています。
コンバージョンAPIの仕組み
コンバージョンAPI(CAPI)は、ひとことでいうと「あなたの会社のサーバーから、広告プラットフォームのサーバーへ直接“成果データ”を送る仕組み」です。ブラウザを経由しないため、Cookie規制や広告ブロッカーの影響をほとんど受けず、より正確な計測が可能になります。
■ どこからどこへデータが送られる?
コンバージョンAPIのデータの流れは、以下のようにとてもシンプルです。
| 送信元 | 広告主のサーバー (Webサイト、CRM、MA、基幹システムなど) |
| 送信先 | 広告プラットフォーム側のサーバー (Google、Yahoo!、Meta など) |
| 送る内容の例 | ・どんなアクションが発生したか └ 資料請求、問い合わせ、購入、会員登録など ・ハッシュ化(暗号化)されたユーザーデータ └ メールアドレス、電話番号など(暗号化され、個人が特定できない形式) |
広告プラットフォーム側では、受け取ったハッシュ化データを自社のユーザー情報と照合し、「どのユーザーが成果につながったのか」を判断します。
コンバージョンAPIは 「サーバーから広告プラットフォームへデータを送るための仕組みそのもの」 を指します。つまり、データの“通り道”をつくる技術がコンバージョンAPIです。
■ 照合の仕組み
- ユーザーがフォーム送信を行う
- 自社サーバーにその情報が記録される
- 記録されたユーザーデータをハッシュ化(暗号化)
- 広告プラットフォームへ送信
- 媒体側でユーザー情報と一致すれば「コンバージョン」として計測
ブラウザの動作に依存せず、サーバー同士が直接やり取りするため、計測精度が安定します。
■ ブラウザ方式との比較
| 項目 | Cookie(ブラウザ方式) | コンバージョンAPI(サーバー方式) |
| データ送信 | ブラウザ → 媒体 | サーバー → サーバー |
| 規制の影響 | 受けやすい(Cookie制限・ITP規制など) | 受けにくい |
| 計測漏れ | 起こりやすい(ブロッカー等) | 起こりにくい |
| オフラインデータ | × 取り込めない | 〇 CRM・営業システムのデータも送信可 |

コンバージョンAPIと「拡張コンバージョン」の違い
コンバージョンAPIと拡張コンバージョンは混同されやすいですが、「仕組み」と「機能名」 という関係にあります。まずはそれぞれの役割を押さえておきましょう。
■ 拡張コンバージョンとは?
拡張コンバージョンは、Googleが提供する 「コンバージョンAPIを活用した計測精度向上の仕組み」 の名称です。
- ハッシュ化されたメールアドレスや電話番号をGoogle側で照合
- Cookie規制の影響を受けにくくなる
- 広告の最適化精度(機械学習)が向上
あくまで Google特有の機能名であり、Yahoo! やMetaでは別の名称や仕組みが使われています。
■ 拡張コンバージョンとの違いをわかりやすくまとめると
- コンバージョンAPI : データ送信用の道路(仕組み)
- 拡張コンバージョン : Google がその道路を使って提供しているサービス(機能)
つまり、コンバージョンAPIがあってこそ拡張コンバージョンが成り立つという関係です。
コンバージョンAPIのメリット
コンバージョンAPIを導入することで、広告主・サイト運営者・ユーザーそれぞれにメリットがあります。ポイントを整理してみましょう。
■ 広告主(企業側)のメリット
- 計測精度の向上
Cookie制限の影響を受けにくく、成果データを正確に取得できる - 機械学習の精度向上
正しいデータが入ることで広告配信の最適化が進み、CPA改善につながる - オフラインデータの活用
電話や営業担当者経由などのオフライン成果も反映可能 - データ欠損の防止
安定したデータ収集により、より正確なレポートを生成できる
■ サイト運営者のメリット
- 広告ブロッカーの影響を受けにくい
ブラウザ経由ではなくサーバー経由で送信するため、計測漏れが減少 - 安定したデータ収集
サーバー側で管理するため、ブラウザ依存の問題が少ない - CRMや基幹データとの連携が容易
BtoBサイトでのリード管理や成果把握に特に有効
■ ユーザーのメリット
- プライバシー配慮
Cookieを使わずに成果を計測できるため、個人情報への影響を抑えられる - 関連性の高い広告配信
自分に合った広告が表示されやすくなる - ブラウザへの負荷軽減
通信がサーバー経由になることで、ブラウザ動作が軽く、安定する
BtoB企業にとっての活用ポイント
コンバージョンAPIは、BtoB企業のマーケティング施策と非常に相性が良い仕組みです。特に以下のような企業・状況で効果を発揮します。
- 指名検索やフォームコンバージョンが多い企業
会社名やサービス名での検索が多く、資料請求や問い合わせフォームからの成果が中心の企業は、コンバージョンAPIで正確に計測しやすい - 資料請求からSFA/CRMへのデータ連携
資料請求などのリード情報が自社CRMやSFAに登録される流れと、コンバージョンAPIによるサーバー送信は自然に結びつき、データの二重管理や漏れを防止 - ABM(アカウントベースドマーケティング)との相性
特定企業を対象にしたマーケティングでは、オフラインデータも含めて成果を広告プラットフォームにフィードバックできるため、精度の高い広告配信が可能 - リード獲得から商談化・受注までの成果連携
獲得したリードの進捗状況を媒体に反映させることで、広告配信の最適化や機械学習の精度向上につながる - 機械学習依存型の媒体で効果が出やすい
GoogleやYahoo! の検索広告・リターゲティング広告など、成果データをもとに機械学習で最適化される広告で、コンバージョンAPIによる正確な計測は大きな効果を発揮
コンバージョンAPI導入の流れ
コンバージョンAPIの導入は、タグの設置だけで完結するものではなく、「データをどう取得するか」「どのイベントを送るか」「どこで送信処理を行うか」 といった設計が必要です。
ここでは初心者でもイメージしやすいよう、ステップごとに何をすればいいのかを整理します。
■ ステップ1:計測対象の整理(イベント設計)
まず、どの成果を計測したいか(広告プラットフォームにどの成果を送るか)を明確にします。
(例:お問い合わせ、資料請求、ホワイトペーパーダウンロード、セミナー申込 など)
▽なぜ最初にイベント設計が必要?
広告プラットフォームは「どのユーザーがどんな成果を生んだか」をもとに学習します。
そのため、ここが曖昧だとコンバージョンAPI導入後も成果改善につながりません。
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■ ステップ2:利用する広告媒体の選定
次に、計測したい成果を送信する広告媒体を決定します。
・Google広告(拡張コンバージョン / CAPI)
・Yahoo!広告(コンバージョンAPI)
・Meta広告(Facebook/Instagram CAPI)
媒体によって求められるデータ形式や設定が異なるため、どの媒体でコンバージョンAPIを使うか先に決めておくと後の作業がスムーズです。
■ ステップ3:実装方法を選ぶ
コンバージョンAPIの導入方法はいくつかあります。技術リソースによって最適解が変わるため、最初にどれを選ぶか決めます。
- サーバー側で開発(エンジニア向け)
API仕様を読み、サーバーから直接データを送る方法です。
企業のMA/CRMと連携しやすいですが、プログラミングが必要です。
▽技術者がいない状態でこの方法を選ぶのは現実的ではありません。
GA4自動連携 or 連携アプリの利用が最も現実的です。 - 自動連携(Google広告×GA4)
GA4に成果が入っていて、Google広告を利用している場合は、“拡張コンバージョンの設定”を行うだけで自動送信できます。
▽初心者であれば最初に検討すべき方法です。 - 連携アプリを利用する方法(ノーコードで設定可能)
近年の多くのCRM・MAツール、ECプラットフォームには、「API送信をオンにするだけ」でCAPIを利用できる簡易連携機能 が備わっています。
・コーディング不要
・画面(GUI)操作だけで完結
・テスト機能が標準搭載されている場合も多い
▽特に、CRMやMAツールを日常的に活用している企業にとっては、もっとも手軽な導入方法と言えます。
◆コンバージョンAPI導入時のタグ設定について
コンバージョンAPIを導入する場合、広告プラットフォームごとにサーバー側で動作するタグ(イベント送信用タグ)の設定が必要です。
- 従来のブラウザタグ(JavaScriptで動作)は、Cookie制限や広告ブロッカーの影響を受けやすい
- コンバージョンAPIでは、サーバーから直接データを送信するため、サーバー側タグやイベント設定を行います
- GA4やCRMツールなどと連携している場合は、タグを経由せずデータ送信できるケースもあります
「タグ設定=ブラウザにコードを貼る」だけではないので、自社システムや連携ツールに合わせた設定方法を確認することが重要です。
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■ ステップ4:データ送信のテスト(とても重要)
導入後は正しく計測されているか、二重送信がないかを必ず確認します。
・イベントが広告媒体に届いているか
・ハッシュ化処理(Eメールや電話番号)が正しく行われているか
・タグとコンバージョンAPIで二重計測になっていないか
・コンバージョン数が急増・激減していないか
▽なぜ重要?
コンバージョンAPI導入後のトラブルの多くは「設定ミス・二重送信」が原因です。
■ ステップ5:広告キャンペーンで最適化
コンバージョンAPIによる計測データをもとに広告の最適化が進むか確認します。
▽期待できる改善効果
・コンバージョン数の安定
・CPA(獲得単価)が改善
・学習期間(ラーニングフェーズ)の短縮
・広告配信の精度が向上(適切な見込み客に配信されやすくなる)
▽注意点
改善が出るまで1〜3週間の学習期間があります。
◆初心者だけで導入するのは難易度が高いここまでの内容を見ると、 ◆社内リソースが不足する場合は外部パートナー活用が最も合理的外部パートナーなら、 |
まとめ
Cookie廃止やプライバシー規制の強化により、従来の計測方法だけでは正確なデータ収集が難しくなりました。その中で、コンバージョンAPIは今後のマーケティング計測の基盤となる技術です。
特にBtoB企業では、
- Webサイトにおける入力フォームでのCV(コンバージョン)が多い
- CRM/SFAで顧客情報を管理している
- 複数接点でリードを長期育成する(リードナーチャリング)
といった特性から、コンバージョンAPIのメリットを最大限に活かしやすい環境があります。
コンバージョンAPIを導入することで、
- 成果データの正確性が向上
- 機械学習が改善されCPAも安定
- 商談化・受注データも広告最適化に活用可能
と、マーケティング全体の質が大きく向上します。
「広告が最適化されない」「指名検索やリード獲得の効率が不安定」
このような課題を感じている企業こそ、早めにコンバージョンAPI導入を検討すべきタイミングです。
正しく計測できれば、マーケティングは必ず強くなる。コンバージョンAPIをその第一歩として、データドリブンなBtoBマーケティングを実現していきましょう。
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